筑波大学
University of Tsukuba
Research Center for Knowledge Communities
知的コミュニティ基盤研究センター


知の表現基盤研究部門

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研究テーマ

【研究題目】古銅印と糸印の識別および表現


仮想博物館コンテンツの作成方法の研究の一環として,古銅印の3Dデータを含 むデータベースの構築と利用について検討している.

糸印は,室町時代の明(中国)から生糸を輸入する際に利用されたと伝えられて いる小型の金属印である.明から日本に生糸が送られて来る時に,生糸一斤に つき糸印が一個附属されて来たと言われている.そして,送られて来た生糸の 受け取りの際に,分量等を検査し,その受領の証として,附属の印を請取証に 押したと言われている.しかし,この日明の生糸貿易の取引き過程で,この糸 印が利用されたと伝えられてはいるが,その具体的な使用方法や糸印の形態, 使用後の処置等については,実証生に乏しく,実態は不明な点が多く残されて いる現状である.ところが,糸印の印相が戦国武将や公家,書家などの風流人 の好むところとなり,本来の貿易業務とは全く異なった場で使用されることに なった.特に,豊臣秀吉が,行政文書に押印する時に,この糸印を朱印として 使用したことにより,真似て使用するものが出て,一躍世に知られる存在となっ た.現在,糸印として伝来しているものの実態は不明であるが,『国史大辞典』 (吉川弘文館)の糸印の項目に付されている写真は36個見られる.その他,幾つ かの博物館の所蔵となっているものが伺われるが,公開されているものはあま り多くを数えない.世間で糸印として伝えられて来たものが,幸い本学に200 個ほど所蔵されている.これが全て明から送られて来た糸印とは判断されず, 国内で作られた模造品も混在しているものと見られる.しかし,かなりまとまっ たコレクションであるので,糸印の個体研究の材料としては大いに注目される 存在である.例えば,模造品や別物の銅印と糸印の識別が可能になれば糸印研 究において大きな意義を持つ.




【研究題目】立体構造物の類似性および表現


立体構造物の類似性を求める事は,立体構造物の集合の状況を表現するための 基盤的要素である.我々は機能部位構造に基づくタンパク質分類のための基礎 研究として,グラフを用いた機能部位抽出法について研究して来た.そこでは, 2つのタンパク質の同じアミノ酸残基の対をノードとし,2つのノードについて それらが示す二つのアミノ酸残基の距離関係が類似している場合にその間にエッ ジを結ぶ.こうしてできたグラフ構造の中から,全てのノード間にエッジが結 ばれている部分グラフの最大のもの(最大完全部分グラフ)は,2つのタンパ ク質における三次元的配置が等価なアミノ酸残基群が抽出されたと考える.そ して,同じ機能の発現には等価な三次元配置を持つアミノ酸残基が関与すると 仮定し,上記の方法で得られたアミノ酸残基が機能発現部位の可能性が高いと 考える.

この発見手法は計算時間が膨大であるという問題があり,効率的なアルゴリズ ムが重要である.そのため,我々はその際に用いる最大完全部分グラフの抽出 法についての検討を中心に研究している.その一つは,有機化合物の立体構造 への適用である.ここではアミノ酸に代えて有機化合物の骨格を構成する原子 に注目し,二つの有機化合物の原子対によりノードを作成し,その間の関係か らグラフを作成した.最大完全部分グラフの抽出を伴う類似尺度を設定し,そ れを用いた立体構造の類似度を定めた.現実の有機化合物群に対してその尺度 を適用する事により,この方法が有機化合物の三次元構造の類似性を反映する 有効な指標となりうる事を明らかにした.


【研究題目】専門書と教科書の用語概念の構造


専門知識を用語で表される概念と概念間の意味関係の観点から解析している. 概念が意味関係によって関連付けられている構造の特性が明らかになれば,知 識の表現に有用である.対象分野は主に生物学および医学である.

これまでに,分子生物学を対象とした概念を階層関係に基づいて構造化し,そ の構造の時系列変化および専門性のレベルの変化と概念が取り込まれる機構の 関係について解析した.また,専門家向けと一般向けの医学書を比較し,その 内容レベルを判定できるかを検討した.レベル判定ができれば,利用者の知識 レベルの判定に応用でき,さらにレベルに適したコンテンツの提供が可能とな る.

一方,時系列変化については,これまでに新しく出現する概念は特殊であるこ とが多く,時間の経過とともにより一般的な概念へと変わっていくことが判っ ている.さらには,主に階層関係によって構造化された概念の集合について, 同じ階層においては,専門書に記載されている内容については新しく導入され る概念の割合が多く,約半分に達する.同じ階層レベルに存続するのは1/3か ら1/4で,残りはその階層レベルから消滅する.また,概念は時間の経過とと もにより上位の階層へ移動する傾向が明らかになっている.



【研究題目】場面の連鎖構造の特性と表現


この研究は時間経過が含まれる記述の構造を表現する方法についてであり,物 語の構造を表現する手法を提案した.ここでは,物語を出来事の単位である場 面の連鎖と定義し,複数の視点から階層的に物語を捉えることを目的として, 抽出単位が異なる4通りの場面の抽出方法を提案した.さらに,連鎖の形態に ついても文をつなぐ接続詞などを参考に機能毎の分類を行っている.

複数の物語を対象に,それらの構造を提案したプロットの形で表したところ, 内容が似ている部分では前後の連鎖の形態もよく似ていた.こうした場面の内 容と連鎖の形態がともに似ている場面群は,その物語に特徴的な部分と見るこ とができる.



【研究題目】超高速ネットワークシミュレーション


ここでネットワークとは,対象を要素間の相互作用で表したモデルを意味する. 様々な事柄がこのようなネットワークとして捉えることができ,このようなモ デルを高速にシミュレーションできれば,ネットワーク全体としての挙動と個々 の要素の動きの関係を探ることができる.特に大規模なネットワークの場合, ネットワーク全体で生じる現象の理解と,ネットワークの予測,制御およびデ ザインについての知見が得られる.これまでに,大規模ネットワークを高速に シミュレーション可能な専用計算システムを構築した.

通常の計算機上で実行するソフトウェアとは異なり,電子回路 (ハードウェア) によって直接シミュレーションが行われるため,実行速度はソフトウェアによ るシミュレーションの1 万〜100万倍と,非常に高速である.このシステムは ネットワークをシミュレーションするために特化されたアーキテクチャを持ち, 汎用的な計算機とは全く異なる.

遺伝子相互作用ネットワークと呼ばれる細胞内の遺伝子の相互作用関係を表し たネットワークは,薬品の設計や生命現象の解明に重要であり,本計算システ ムのシミュレーション対象として重点的に研究している.種に依存するが,1 つの細胞には数万種類の遺伝子が存在し,これらが複雑に作用する大規模なネッ トワークを構成する.



【研究題目】メディカルインフォームドコンセント支援システム


本研究は,専門知識を持っていない人に対して,専門知識を判りやすく提供す るための方法についてである.ある対象についての説明の判りやすさは,説明 の記述形式のみならず,説明の受け手が持っている知識にも依存する.対象分 野は医学であり,具体的には,医学の専門外の人が検索しやすく,かつ利用者 の専門レベルに応じた情報を提供する医療情報提供システムの構築,および専 門外の人間が理解しやすいような情報の提示方法についての研究である.

本システムは,知識基盤,医学説明提供システム,生体分子情報提供システム, 生体反応シミュレータ,フロントエンド計算機,ユーザインタフェースのモ ジュールから構成される.本システムの主要モジュールの1つである知識基盤 は,分子生物学等の基礎的な知識と,医学についての知識の2種類で構成され る.これまでに,医学の基礎となる生化学,分子生物学,免疫学,生物学の専 門用語と,医学の基本的な用語および外科全般について専門用語の抽出と,関 連する文章を収集してきた.



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